誤食のお話です。
犬猫は非常に誤食が多くいろいろなものが出てきます。
クリップのような金属製の物から桃の種などの植物類、ゴム製のおもちゃ類など口に入るものはすべての可能性があります。
誤食に対する処置としては、食べてすぐの場合、吐かせる方法があります。
前提として、吐かせても食道などに刺さらないようなものでなければなりません。
吐かせるための注射を打てば10分程度で嘔吐を起こします。
それでほとんど出てきます。
次に、嘔吐させても出ない時や刺さりそうなものであれば、麻酔下の内視鏡で取ることになります。
最後に、内視鏡でも無理な場合、例えば、食道を通れないサイズのものや鋭利なもの、腸内に閉塞しているときは手術になります。
これはそんな誤食のお話です。
さて、お題にある紐状異物ですが、紐状異物は猫に多く見られる傾向があります。
猫は紐状のものが好きでそれを舐めたり齧ったりして遊びます。
猫の舌はザラザラがあり効率よく呑み込めるようになっています。
そのため、紐状の物は先端を舐め取ってしまうと自然に飲み込まれていきます。
細いものであれば、嘔吐して出るか便に絡んで自然に出てきます。
紐状異物が厄介なのは胃で引っかかると腸の方に伸びていき、腸がアコーディオン状になってしまうことです。
この場合、嘔吐が止まらなかったり食欲が全くなくなってしまいます。
時間が経過すると腸が壊死を起こしたりして亡くなることさえあります。
我々が見る専門書といわれるような本にも、猫の紐状異物はレントゲンや超音波検査のアコーディオンサインで紐状異物を診断するとあります。
しかし、今回の症例は全く違いました。
1週間ほど前から嘔吐するという猫でした。
触診すると何やらお腹の中に大きくてセメントの様に硬いものが。
猫は巨大結腸症といって凄い便秘になってしまう病気があります。
まずはそれを疑い、レントゲンと超音波検査で調べてみました。
レントゲンを見ると胃の中に何か巨大なものがあり、超音波検査ではその巨大なものは音を通さないようなものが大量にあるであろうことがわかりました。
ですが、何が入ってるのかまるっきり見当がつきませんでした。
飼主さんに何か誤食しているようなものがないかお聞きしましたが、ネズミの人形で遊んだり紐は食べることはあるけどそれ以外はあまりないということでした。
その時は、紐なら細いし柔らかいし、猫ならアコーディオンサインが多いし可能性は低いかなぁと思っていました。
異物も動かないので内視鏡も無理と判断し胃切開の手術を行いました。
結果から言うと、異物の正体は巨大な紐の塊でした。
胃に穴が開いて壊死していたりいろいろ大変でしたが、取り出したものがこれです。
手術中は、なにこれ?でっかい人形!?紐もあるけど何このサイズ!?と動揺を隠せませんでした。
手術後、改めて見ると、いろいろな紐が組み合わさっているように見えます。
中心にあるイソギンチャク状の物は、髪用のヘアゴムのようです。
中心部の布だけ残り左右の布がないのでイソギンチャク状に見えてるのでしょう。
ちなみに重さが120gです。
120gってどれくらいの物と思いますか?
120gは120gだろうといわれてしまえばそのままですが、おうちに置いてある箱入りの輪ゴムが100gです。
それ以上にあるのです。
猫でここまで大きな異物は初めてです。
というか、今までよく詰まったりしなかったなぁと思います。
異物の上の方は黒光りするくらいなので相当前から入っていたのではないかと思います。
むしろこれだけ入っていて、よく体重維持してたなぁ・・・。
胃のほとんどがこれで埋め尽くされていたので常に吐き続けてもおかしくはないと思うんですが、体の適応力って凄いですね。
胃穿孔もありましたし、一部の胃切除もあったので順調に治ってくれればいいなと思っています。
誤食はお気を付けくださいね。